うちには2匹の長毛猫がいる。チャタロウとクロスケ。見た目はどちらもふわふわで、同じ屋根の下で暮らしているのに、「外」に対するスタンスが170度ちがう。
これはそんな2匹の、ある晴れた日の冒険——もとい、片方だけの冒険——の記録である。
🐾 🐾 🐾
チャタロウ:生まれながらの冒険家
チャタロウは外が好きだ。いや、「好き」という言葉では足りない。外に出るためなら、ハーネスだって喜んで装着する。リードをつけ始めた瞬間から目の色が変わる。玄関のドアが開く前から前足がわずかに浮いている。そういう猫だ。

ハーネス姿のチャタロウ。コンクリートの上でしゃんと前を向き、何かを見据えている。その横顔、まるで武将のよう。
外に出れば、鼻をぴくぴくさせながら地面のにおいを丹念に確認し、車道の方をじっと眺め、やおら歩き出す。リードが張るまで歩く。張ったら少し立ち止まり、また歩く。この繰り返しを延々と、飽きることなく続けられる。散歩に付き合う人間の方が先に「そろそろいい?」となるくらいだ。
「外の空気を吸わないと、私の一日は始まらないのよ」とでも言いたげな顔をしている。
🟠 チャタロウ
キャラクター:冒険家・行動派・好奇心の権化。ふわふわのオレンジ&白の長毛。外に出ると目が輝く。ベランダも大好き。「もっと先へ」が口グセ(たぶん)。
クロスケ:ついて行きたい、でもやっぱりいい
問題はクロスケだ。
チャタロウにリードをつけ始めると、クロスケもそわそわしてくる。「おっ、なんか楽しいことが始まるのか?」という顔で近づいてくる。そうか、お前も行くか。ならリードをつけてやろう。
——外に出る。
クロスケ、数歩歩く。立ち止まる。辺りを見回す。また歩く。また止まる。そして振り返る。
「……やっぱりいい。帰る」
わずか数分で玄関方向を向き、もう一歩も進む気はない、という意思表示をしはじめる。さっきまでの「僕も行く!」という熱意はどこへ。気持ちの移り変わりが早すぎる。

⬛ クロスケ
キャラクター:慎重派・インドア志向・グリーンの瞳が美しい黒白長毛。外は「行く気になれば行けるけど、別に行かなくていい」スタンス。帰宅後は隅っこで熟睡する。
ベランダという名の「ちょうどいい外」
ベランダは少し事情が違う。
チャタロウはベランダも大好きで、窓が開いていれば迷わず出て行く。日向ぼっこをしながら外の風を感じ、ときどき下の道路を眺め、充実した時間を過ごす。
クロスケはというと——窓の前にいても、なかなか出ない。カーテンの陰にすっぽり収まって、そこから外をちら見している。「出てもいいんだけど、まあ、ここからでも見えるし」という合理的判断なのか、それとも単に臆病なのか。
「出るか……出ないか……(カーテンをもう少し引き寄せる)」

窓越しに見えるチャタロウ(外)と、カーテンの陰で様子をうかがうクロスケ(内)。この構図、毎回笑ってしまう。
しかし稀に、2匹が揃ってベランダに出ていることがある。こういうときは不思議と静かで、並んで同じ方向を見ていたりする。言葉も交わさず(当たり前だが)、ただそこにいる。

ベランダの角で2匹が並ぶ。光が横から差し込んで、なんともいい写真になった。「仲良し」というより「たまたま同じ場所にいた」感がリアルでいい。
ベランダ堪能後のクロスケが、なぜかいちばん猛々しい
ここが一番の謎なのだが、ベランダから部屋に戻ってきたクロスケが、なぜか最もテンションが高い。
外に出てきたチャタロウは「ふー、満足」という感じで落ち着いて帰ってくる。だがクロスケは——帰ってきてからが本番とばかりに目をらんらんと光らせ、何かに向かって走り出し、ものすごい顔で壁や床を睨みつけたりする。

ベランダ帰りのクロスケ。正面から見ると「何かを狩ろうとしている」以外の表現が見つからない顔つき。
いったい外で何を見てきたんだ。何に火がついたんだ。
そして——そのテンションのまま10分も経たないうちに、部屋の隅っこでしれっと丸くなって眠っている。

ベッドの陰、カーテンの隣、床の上。こっそり収まって熟睡中のクロスケ。猛獣の面影、なし。
この緩急、人間には到底マネできない。
おわりに:個性とは、こういうことだと思う
チャタロウとクロスケ、同じ家で育って、同じものを食べて、ほぼ同じ生活を送っている。なのにこんなにも「外」への向き合い方がちがう。
チャタロウは外に出るために生きているような猫で、クロスケは外に行くことよりも「帰れる場所がある」ことの方が大事そうな猫だ。どちらが正しいとか、どちらが猫らしいとかじゃなくて、ただそれぞれがそれぞれなのだ。
今日も玄関を出ようとすると、チャタロウがいの一番に飛び出してきた。クロスケはちょっと寄ってきて、すぐ引き返した。
いつも通りの、うちの朝だった。
🐾 🐾 🐾 🐾🐾🐾 「茶猫と黒猫と低速歩行。」🐾 🐾 🐾 🐾🐾🐾




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